Monday, January 01, 2018

そのうち映劇 映画日記 その3 希望のかなた


ユーロスペースでカウリスマキの『希望のかなた』を観てきた。

難民3部作の第2作。舞台はヘルシンキ。映画は、カリードとヴィクストルム、ふたりの男のそれぞれの物語から始まり、ふたつの物語はやがてひとつになってゆく。カリードはシリアからの難民で、偶然、ヘルシンキにたどり着いた。ヴィクストルムはアル中の妻と別れ、ひとりになったばかり……。

船荷の石炭殻から真っ黒な顔をしたカリードが出てくるシーンから「あの」結末まで。印象的なシークエンスの連続で、映画は観客を鷲掴みにして離さない。余計な台詞や余計なアクションを一切排して、それでもふたりを取り巻く「今」を見事に物語る。カウリスマキのショットやカットは素晴らしく饒舌だ。

ヨーロッパの「難民問題」というこれ以上ないシリアスな問題を真正面から扱いながら、辛気臭くなったり、お説教くさくなったりせずに、映画はいかにもカウリスマキらしい「世界」を描き出してゆく。ユーモアと音楽をたっぷり目に使いながら、ともすれば忘れ去られそうな、世界の片隅をしっかりと照らし出す。苦境に直面しても、恨み言ひとつ言わず、寡黙に日々を送る無名の人びとがそこにはいる。よく「ミニマリスト」と言われるカウリスマキだが、結果として映画はマキシマムに「今」を描き出している。

これはやはり、どうしても観るべき映画。過酷な現実と小さな善意の物語。カウリスマキらしく、愛らしいわんこも、「やられた!」な「日本」もしっかり登場するが、上田映劇で観たらきっと一層感慨深いカットもあるので、せっかくだから是非是非、映劇で(と勝手に応援)。



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