前者は東海テレビが制作したTV番組兼劇場公開作品、後者は『ヨコハマメリー』の中村高寛と『夢みるように眠りたい』の林海象がタッグを組んだ注目作。対極にあるとも言える2本のドキュメンタリーを同時に観られる貴重な機会。
『人生フルーツ』に描かれる老夫婦像は、おそらく誰もが憧れるような理想的な老後の姿だろう。津端修一と英子、都市計画家とその妻。90歳と87歳……ふたりは秀一が手がけた巨大な住宅団地の傍で、300坪の土地に自宅を構え、雑木林と畑を維持して、自給自足的生活を送っている。妻を「僕の最高のガールフレンド」と語る夫と夫を「いろいろしてあげたいし、してあげたことは私に返ってくるの」と話す妻。「ゆっくりコツコツ」ができるだけの余裕……そして知性(ふたりは90度の角度に座って、同じ方向を見る)。優しく緩やかに流れる時間のなか、周囲の人たちや未来の人たち(孫の「はなちゃん」)への思いやりを語り、実践する老夫婦のドキュメンタリーは、実際にあった暮らしを記録してはいるけれど、ある意味、制作者たちの意図りのファンタジー(あるいは寓話)に仕上がっている。
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