今から110年前に書かれたラブレター。
作家ジャック・ロンドンがのちに妻となる女性チャーミアンにあてたものだ。
中編小説『試合』(The Game, 1905)を書いているときに彼女の送ったもので、執筆があまりうまくいっていない様子とチャーミアンとの「秘めたる恋」の様子が伝わってくる。
いまだに『試合』の執筆から抜け出させないままなんだ、愛しい人よ。これは失敗作だね。全然「物語」になってない。いいとこ、人生の模写ってとこさ。でもこれは僕にとってはいい仕事なんだ。これは習作なんだよ。僕は、僕の腕前をどうやって使いこなしたらいいか、どう使いこなすべきか、学んでいる最中って訳さ。日曜日は一日中、夜までトランプをして遊んだ。ダンギーの店ではピードロをやって、夜はポーカーをしたんだ。
ロンドンはこの当時、最初の妻ベスと離婚係争中で、そんなこともあってか、宛名も差出人の名前もない。けれどもこの筆跡は紛れもなくロンドンのもので、前向きで
どんなときでもユーモアを忘れない彼らしい手紙となっている。
「失敗作」『試合』は高級誌に掲載され、翌年マクミラン社からイラスト入りで出版されて、経済的には「成功作」となった。
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